オフィスの甘い罠
冬の冷たい風がそこを
ピューピュー吹き抜けて
行って、あたしの心を
凍えさせる。



この気持ちはなんだろう?



秘書なんてなりたくて
なったわけじゃなかった。



柊弥の傍になんて、
いたくていたわけじゃなかった。



だけど気がつくといつの間
にか、その日々はあたしの
中で当たり前になってて。



憎らしくてうっとうしいと
思いながらも――

アイツが商談を成功させる
のを見たり、そのための
戦略を練ったりしてるのを
見るのは、楽しかった。



イキイキとして仕事してる
柊弥との毎日は軽快で
変化にとんでて、退屈だ
なんて感情はしばらく忘れてた。



(意識する暇なかったけど……

ホントに、アイツの言った
とおりになってたんだ――…)




『つまんねーって思ってる
毎日を、変えてやる』
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