オフィスの甘い罠
あたしが思わず硬直
すると、柊弥はクックと
肩を震わせて笑って、



「冗談だよ。

そろそろ出かける準備
しねーとな。

今朝も朝から戦略会議だ」



「あ…………」



そうだ。

今日はまだ平日。



「そーだよね、ゴメン。

時間――ヤバかったら
サッサと行って。

あたしのことは気に
しないでいいから……」



そう言うと、柊弥はさも
意外なことを聞いたって
感じで顔をしかめる。



「何言ってんだ?

お前も行くんだぜ?」



「えっ!?」



大声をあげるあたしに
柊弥がベッドサイドの
椅子にかけたスーツから
取り出し、あたしに投げて
よこしたのは――。



「これ……あたしの辞表!?」



見覚えのあるそれは
たしかにあたしが書いたもの。



もしかして、ずっと
ポケットに入れてたの……?
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