オフィスの甘い罠
Aphroditeから柊弥に
連れて行かれたあの
ホテルで、あたし達は
飢えたケモノのように
何度も体を重ねた。



自分でもどうして自分が
あんなことになったのか
わからない。



ただ、彼があたしを呼ぶ
『梓』っていう声に、
あたしはどんどんおかしく
なって。



本当に空が白むまで、
あたし達はお互いを求め
続けてた。




そして早朝、ようやく
眠りについた柊弥を置いて
あたしはベッドを抜け
出し、タクシーで家に戻り。



シャワーを浴びて、
濃いコーヒーを飲んで。



――梓としての日常に戻る
用意を、してきたつもり
だったのに……。






(余韻が……消えない……)



甘く囁く低い声。

肌の感触。

体の奥に残るうずき。
< 67 / 288 >

この作品をシェア

pagetop