オフィスの甘い罠
(……どうしよう……明日)



怒りと不安のはざまで、
あたしは凍ったように
立ち尽くした。



柊弥に会うために結局
明日も会社に来るはめになる。

それこそが、アイツの狙い
なんじゃないかって気がする。



それなら何があったって、
派遣会社には『辞める』で
通して、二度とここには
来ない方がいいのかもしれない。



そう思うのに……なぜか、
胸の奥のモヤモヤした
気分がぬぐえない。



―――どうして?



自分自身に問いかける
けど、返ってくる答えは
なかった。



もしかしたら、柊弥に
負けっぱなしな結果になる
のが悔しいのかもしれない。



秘密を知られて、会社も
店も追われる。



こんなふうにあたしの
世界に入り込んできて
それをブチ壊すような
ヤツは、初めてだから。
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