史上最強の覆面戦闘員
 ゾックが意味もなくシャドーボクシングをした。見事なまでにへっぴり腰だ。『さあ、今こそ史上最強の覆面戦闘員の力を見せつけるときだ!』


「戦闘員、俺だけじゃねえか」


『相手は女だ、ボコボコにしてやれ!』


「オマエ、そんなキャラだっけ?」


 ゾックはシャドーボクシングを止めて、カピカピの背中を押した。『さあ、氷風呂の前まで進め』


「はあ……」押し出されたカピカピはため息をつきながら、とぼとぼ進む。


 カピカピの向こう側では、ハデアールが喚いている。《ハッハッハッハ、お面ライダー、ヤツをミンチにしてやるのでアール!》


【はいです。やるのです。がんばるのです】


 カピカピとお面ライダーは氷風呂の横まで進み、1メートルほどのところまで近づいたところで、お互いに立ち止まった。


『試合開始★ピェー』


「はあ……」ゾックの声を聞いて、カピカピはもう一度、ため息をついた。少し俯き、目だけをお面ライダーに向ける。「やっぱ殴れねえよ、ユシャ……」
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