史上最強の覆面戦闘員
 








 数時間前、街でユシャと歩いていたカピカピは、巨乳の女性とすれ違った。

無意識に、チラリと視線を巨乳に向ける。

繋いでいた手を引っ張られて、カピカピは足を止めた。

ユシャがうつむいて、立ち止っていた。



「どうかしたのか、ユシャ」



 カピカピの問いかけに、ユシャは、吐き出すように答える。

【別れたいです。別れたいのです。もう終わりにしたいのです】



 驚いた、というよりは、なにを言っているのだろう、とカピカピは思った。

「はぁ? どうしたんだよ、急に。これから映画観に行くんだろ? 『黄身のための物語』と、同時上映の『白身を見捨てないで』を」



【わからないです。わからないのです。なんでカピカピサンがユシャを選んだのかがわからないのです】

ユシャが早口でつぶやく。



「なんでって……」



 答えようとしたカピカピの言葉を聞かず、ユシャがまくしたてる。

【巨乳です。巨乳なのです。カピカピサンは巨乳ならだれでもいいのです】



 カピカピは一瞬、言葉を失った。そんな風に思われていたのか、と悔しい思いすらあった。

「それは違う! 俺は……」



【さよならです。さよならなのです。もう会うことはないのです】

ユシャは繋いでいた手を離す。最後にカピカピの目を見て、ほほ笑んだ。

くるりと後ろを向いて、走り出す。



「ユシャ! ちょっと待……うっ!」

引き留めようとしたカピカピの背中に、麻酔銃が撃ち込まれた。

カピカピはそのまま、意識を失った。
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