大好きな君にエールを*番外編
少しすると、ドアの向こうで聞こえたやり取り。
「永松!俺の勝ちだっ」
「勝負はしてない」
「走ってたじゃねーかよー」
荒嶋と永松の声が聞こえてきた。2人の会話は丸聞こえ。もちろん、キャプテンが黙っているわけがない。
ガラッ
「シゲさん!お久し……」
「荒嶋、永松」
ゴンッ
キャプテンから痛ーいゲンコツを食らった。俺も食らったことあるけど、あれは相当痛いぞ。
「キ……キャプテン、痛いっす」
「廊下を走るな。病院のマナーを守れ」
「「……はい」」
「もう一度自販機まで行ってこい。そしてお茶を買ってから戻ってこい。いいな、走んなよ?」
肩を落とす荒嶋と無表情の永松が静かに病室を出て行った。途端に、全員が笑い出した。
「アイツらマジでバカだろ?」
「それに自販機まで戻るとか単純!」
俺も思わず笑った。荒嶋だけじゃなく永松までだもんな。
「大丈夫かよー、花龍のキャッチャーは」
誰かが言った一言で、その場はシンとなった。きっと、俺のことを気にしたんだと思う。でも、
「俺も荒嶋がキャッチャーとか心配!たぁっぷりしごかねーとなっ!」
俺は大丈夫だ、と伝えるように冗談を付け加えて言うと、みんなに笑顔が戻った。