大好きな君にエールを*番外編
「……本物だ」
少しずつ近づく球場に釘付けになり、窓の先から目を離さないシゲ。欲しいおもちゃから目を離さない子どもみたい。
「ご乗車の方は足元にお気をつけて……」
運転手の言葉に耳もくれず、停車と同時に立ち上がって出口へ向かおうとするシゲ。ちょっ、待って。
「ほら、行くぞ!実貴っ」
シゲの瞳は希望に溢れていた。早く行きたくて仕方がない様子。あたしも急いで料金を出す。
「甲子園、見に行くのかい?」
すると、運転手に声をかけられた。
「はい!仲間が試合をするんです!」
「君は?野球が好きそうだけど……」
「超好きっす!だから応援に来たんです」
シゲ、野球がしたいって伝わってくるのはあたしだけなのかな?すごく、胸が痛いよ。
「おじさん、花龍を応援してくださいよ!新キャッチャーの活躍もお楽しみに」
「花龍?……!!君、もしかして……」