大好きな君にエールを*番外編
階段を一段ごと駆け上がるたびに、ドキドキしてくる。斜め前を行くシゲの背中を見る。シゲはきっとあたし以上なんだろうな。
少しずつ青空が広がっていく。スタンドの声援と、楽器のハーモニーが大きくなっていく。そして、階段のラストを上りきった。
────────やばい。
その言葉しか出てこなかった。
空は太陽を見守って青々としていた。周りには暑さも忘れて花龍を応援する観客の姿だらけ。
そして、主役の花龍は豆粒くらいの大きさで、戦いをしていた。
「す、すげぇ……」
シゲもまた、あたし以上に感動していた。
シゲが1年の頃、花龍は甲子園出場を果たしていた。でも、シゲはその時も運悪く、体調を崩していたためにこの場へ来ることが出来なかった。
最後の最後まで応援だけでも!と粘ったが、先輩や監督から体調を崩している奴は同行させないと言われたのだ。
応援スタンドもベンチも選手としても、この場を経験したことがなかった彼。だからこそ、感動は大きいと思う。
「こんなに……すげぇところなんだな」
テレビじゃ伝わらない、この感じ。シゲの瞳が少しだけ光った気がした。
「え?泣いてんの?」
なんて、デレカシーのないことを言ってしまった。