彼の視線の先、彼女。
「世界で一番、幸せになって欲しい」
そう言ってそっと私から離れる。
最後までカッコいい人だ、ずるい。
こうやって最後は笑顔で言うなんてずるい。
「どう?壱稀よりいい男だよ?」
そうやって最後は笑って冗談を言うなんてずるい。
「馬鹿だなぁ、千尋は」
馬鹿だ、千尋は馬鹿だ。
私みたいな馬鹿を好きだなんて、
私の幸せを願うなんて、本当に馬鹿だ。
「うん、俺も思うよ。馬鹿だって」
「嘘だよ・・・っ」
「ほら、瀬璃。次は瀬璃が言うんだよ」
そうやって優しくするところなんて
・・・っ本当に馬鹿だ。