彼の視線の先、彼女。
「知ってるのに聞かないの?何で?」
「だからっ、何の話っ?!」
もういっぱいいっぱいだ。
耳元で話されるとゾクッてして恐くなる。
千尋だってこんな事してこないのに。
こんなの恋人同士のする事じゃないの?
友達同士でこんなことしちゃいけないんじゃないの?
「俺、付き合ってんだよ?」
耳に壱稀の唇が触れた。
私の熱くなった耳に冷たい唇が触れて驚きの声が出る。
「ひゃ・・・っ」
その瞬間、壱稀は勢いよく私から離れる。
髪の毛でその表情は見えなかった。