彼の視線の先、彼女。
「好きじゃないってばっっ!!」
気づけば大声でそう叫んでた。
嘘を叫んでた。
「・・・そっか」
そう呟いて手を離す。
私が顔を上げたときは既に後ろを向いてて背中しか見えなかった。
「壱稀・・・?」
そのやけに寂しげな背中に声をかけた。
弱弱しい声だった。
「好きじゃねーなら、あんなこと言ってんな」
そんな冷たい声が聞こえた。
胸に突き刺さるような初めて聞いた声。
体がビクッて震えた。