彼の視線の先、彼女。





「好きじゃないってばっっ!!」


気づけば大声でそう叫んでた。

嘘を叫んでた。





「・・・そっか」


そう呟いて手を離す。

私が顔を上げたときは既に後ろを向いてて背中しか見えなかった。





「壱稀・・・?」



そのやけに寂しげな背中に声をかけた。

弱弱しい声だった。






「好きじゃねーなら、あんなこと言ってんな」




そんな冷たい声が聞こえた。

胸に突き刺さるような初めて聞いた声。





体がビクッて震えた。








< 123 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop