彼の視線の先、彼女。






「好きじゃないなら、好きとか言うなよ」


泣いてるかと思った。

その声が泣いてるように聞こえた。





けれど歩き始めた壱稀。



泣いてはいないけど、きっと心の中で泣いてる。



そんな気がした。






「壱稀・・・っ」


だからどうしても、引き止めたくて。

必死で呼んだ。





「ちょっと、ま・・・っ」


そう声をかけたとき歩く足を止めた。




くるりと振り返り私を目で捕らえた。


もう、逸らせなかった。







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