彼の視線の先、彼女。
「知ってた?」
「え?」
私が呼びかけて止まったんじゃない。
何か私に言う事があって彼は、壱稀は止まった。
夕日に照らされた壱稀がやっぱり泣いてるように見えた。
その切なそうな顔を見ると泣きそうになった。
「俺、好きなんだよ。瀬璃のこと」
そう冷たく言って消え去った。
気づいたときには、もういない。
ふにゃりと足の力が抜けて下に座り込む。
追いかける事すら出来ない。
「・・・っえ」
頭が混乱してる。
は?
好きって言ったの?
そう気づくのにはもっと多大な時間がかかった。