彼の視線の先、彼女。







「瀬璃は強くなったねー」



鞄をポンと机に放り投げて窓の近くの席に座った。

前の千尋の席。





「そうかなぁ」


「うん。泣き虫だったのに」




泣き虫って・・・。

まぁ確かに、千尋の前では結構泣いてたけど泣き虫って言われるほど弱かったっけ?





「泣いたっていいのに」

千尋の隣に座った。




”泣いたっていいのに”って言われても私は泣かないというか泣けない。



泣くほどつらいわけじゃなし、昨日の壱稀の言葉に動揺して泣く暇もない。





きっと泣くくらいなら壱稀の言葉の真実を考えたほうが絶対的にマシだ。

そっちの方が、苦しくなんてない。






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