彼の視線の先、彼女。
「っていっても泣かないのはバレバレだからね」
「何それ」
「もういっその事、略奪すれば?」
その言葉は気まぐれなのか、
果たして本気なのか。
一緒にいる私ですらわからない。
略奪って爽香ちゃんから壱稀を奪うってことでしょ?
いやいや、奪うってことは無理ですよ。
それなら一途に想い続けますよ、切ないけど。
「どこまでお人よしなんだか」
フッと笑う。
どこか大人びた笑顔だった。
メニュー