彼の視線の先、彼女。
「ずるいと思ったの」
「ずるい・・・?」
「千尋くんから想われてるのに千尋くんの気持ちに気づかないで知らぬ間に傷つけてるのに。それでも愛されてた瀬璃ちゃんが」
そんな風に思われてるなんて知らなかった。
きっと爽香ちゃんは何もかも知ってたんだ。
「私だって好きなのに。千尋くんが大好きだったのに。瀬璃ちゃんは・・・っ」
苦しくなった。
どこかその感情は私を取り巻く黒い感情と似ていた。
一度は思った。
爽香ちゃんにそういう感情を私は抱いていた。