彼の視線の先、彼女。
「やだ、壱稀が行けば良いじゃん」
「あのなぁ・・・」
困り果てた声。
あぁやっぱり私って邪魔なのかなぁ。
好きって気持ちさえも重いんだとしたら告白なんてできない。
チャンスがなくなった。
「壱稀・・・、はやく行ってよ」
もうやだ。
見られたくない。
はやく、はやく行ってくれれば大きな声で泣けるのに。
好きだって叫んでもバレやしないのに。
「瀬璃」
しばらくしない内に脚立の上に座る壱稀が下の私に声をかけた。
思わずボトッと本を落としそうになる。
「んなに、・・・俺のこと嫌い?」
見上げたら切なそうに眉を下げた壱稀が弱弱しくそう言った。