彼の視線の先、彼女。
遠くなってゆく背中。
愛しくてたまらない人の大きい背中。
久しぶりに会話する事が出来たのにどうしてか苦しい。
何故だか素直に喜べない。
「・・・りっ、瀬璃ーっ」
「へ?あ、何?」
最近、私は耳が遠いのだろうか。
何度も名前を呼ばれてたらしいのに気づきもしなかった。
千尋は呆れた顔で私の顔を見ている。
「・・・面倒くさい事になっちゃったな」
「え・・・っ」
頭を小さく掻いて窓の外を見つめる。
その姿が様になる千尋は、意外と男前だったようだ。
何故気づかなかったのかは、未だ不明・・・。