彼の視線の先、彼女。
壱稀がそう言う。
あの頃から少し低くなった声。
隠されるように作られた表情。
変わったんだなぁって思った。
私が知ってた壱稀とは少しだけ、ほんの少しだけ変わってた。
良い意味でも、悪い意味でも、少しだけ。
けれど、好きの気持ちはきっと増した。
それでも、彼は彼のまま。
好きの気持ちが減る事なんて少しも無かった。
「そうだね、お開きにしよっか。また明日ねっ」
爽香ちゃんがそう言ったけど、私は何も言えず笑って頷く事しか出来なかった。
先に屋上を出る2人の背中を見送る事しか出来ない。