彼の視線の先、彼女。
「・・・思ったよ」
そりゃあ思った。
どうして、なんで?って。
「俺、期待にこたえるつもりサラサラないもん」
さっきと同様、にこやかに笑う。
もう何もかも分からなくなってしまうほどの笑顔で。
「じゃあ・・・っ!なんで」
なんで焦ったのか分からない。
けれど気づけば私は、体を預けていたフェンスから勢いよく立ち上がっていた。
「好きな人に好きな人がいる辛さ、分からせてやりたいの。爽香ちゃんに」