彼の視線の先、彼女。
複雑な恋心
壱稀は突然言った。
それはもう、夏休みに近づいてきた7月の初めの頃のこと。
「俺、爽香を諦めた」
もうこうやって話すのはもうすぐ2ヶ月くらいだった。
壱稀への恋心を押し殺して、壱稀を応援しているフリをした期間は。
本当は諦めてしまえって。
心のどこかで、いや中心でそう思っていたけれど。
だけど、本当にそうなるとは思わなかった。
壱稀は簡単に自分の恋を諦めてしまった。
「なんで・・・」
また、声が震えてる。
嬉しいはずなのに、もう苦しくないはずなのに。
何故か苦しい。