彼の視線の先、彼女。
壱稀の恋が報われない事くらいしってた。
一番、壱稀がそれを知ってる。
私もそれを、知ってる。
「・・・俺、言ってくる」
だから私も逃げられない。
こうやっていい人ぶって、壱稀の弱ってるときにつけこむつもりなんて無い。
「待って」
歩き始めていた壱稀に声をかけた。
馬鹿だと思う、本当に。
千尋だってこの状況で言うなんて呆れるだろう。
だけど、これじゃ押し付けてばかりで。
自分ばかり傷つく事を恐れて何もしないままで。
それは、いけないって思ったの。