彼の視線の先、彼女。
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カツカツカツと、チョークの音。
そっと目を瞑るとあの頃を思い出す。
だからなのかもしれない、このチョークの音が好きなのは。
先生の板書が多い教科の時は、授業を聞かずその音に浸る。
懐かしくて、甘くて、悲しくて。
あの声が、あの時間が蘇ってくる。
鮮やかで、儚くて、短いあの時間が。
「瀬璃ってさ、」
そんな時、右から男の子にしてはちょっぴり高い声が。
恐い先生に聞こえないように潜められた声が、そっと聞こえた。