彼の視線の先、彼女。








目の前に戻って来てくれた、彼。



キョトンとした表情でこちらを見ている。





暑苦しい室内。


窓から入ってくる夏特有の風。


おでこからたれる汗。






「私、」



緊張する。


もう終わるかもしれない。


ここまで築き上げた関係が崩れ去ってしまうかもしれない。






”せっかく仲良くなれたのに”



心のどこかでそんな声が聞こえた。







確かにそう、せっかく仲良くなれた。




これからもう話せなくなるかも知れない。




もうこうやって笑いあう事すら出来ないかもしれない。





それでも私は、もう逃げられない。



「好きだよ、壱稀」



私は一歩踏み出した。








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