彼の視線の先、彼女。
「千尋、くん?」
隣で爽香ちゃんの声がした。
「え?あぁ、ごめんね?」
ふと気づいたときには、俺はいつもあのときを思い出してる。
忘れたいのに、忘れられない。
それでも好きでいると誓ったあの日。
「いや、大丈夫です」
隣にいるのは爽香ちゃん。
それなのに俺は瀬璃で頭が一杯だ。
「辛いって思わないの?」
いつも思う。
彼女は辛くないのだろうか、と。
傷つけてる張本人が言うのも可笑しい事なのだろうけど。