彼の視線の先、彼女。
苦しいけど、愛しい。
悲しいけど、恋しい。
彼はそれを知っててそう言ったのかな。
「壱稀の馬鹿・・・っ」
どうせなら、強く突き放してくれればよかった。
ごめん、って謝ってくれれば良かった。
白いシャツには涙の跡。
数え切れないほどの模様。
それほど彼が好きだったと、実感した。
「うぅ・・・っ」
もし、壱稀が振られて。
どんなに弱っていたとしても、そこに私がつけこんだとしても彼は。
壱稀はきっと、私をそっと突き放すだろう。
彼は強い人だ、私に頼ったりしない。