彼の視線の先、彼女。
「どうしても瀬璃を、忘れられなかった」
ドクンと跳ねた心臓。
その切ない目が私の全てを捕らえる。
いきなりの言葉に驚きが隠せなかった。
遠くで野球部が朝練をしていてかけ声が聞こえる。
意識が遠のきそうなくらい長い時間のように感じた。
「瀬璃が壱稀を好きなのは知ってる」
「・・・うん」
どうして皆幸せになれないんだろうってこの期に及んで思う。
好きな人と幸せになりたいと思うのはごく普通の事で、寧ろ思わないほうが変だと思ってしまう。
結局はきっと好きを抑えられないような気がするんだ。
私がそうだから。