コスモス
中から、何人かの看護師さんと斉藤先生が出てくる。
「先生…っ」
お兄さんが近寄る。ミキはおばさん達を呼びに行くのか、廊下を駆け出した。
斉藤先生が、口を開いた。
「ここに、シュウ君という方がいらっしゃいませんか?」
…俺?
「あの…俺ですけど…」
恐る恐る手を挙げた。
視線が僕に集まる。
「中に…入ってもらえるかな?」
…「明日可ちゃん、朦朧とした意識の中で何度も呟くんです。『シュウ』と、何度も」
廊下には、明日可の家族とカズ達がいた。明日可の担任は、一度学校へ戻ったようだった。
「私はね、信じてみようと思うんです」
病室の方を向いて、斉藤先生は言った。
「私は医者ですから、こういうことを言うのもおかしいかもしれませんがね…。結局最後は本人の生命力と、誰かの強い気持ちなんですよ。それが揃った時、奇跡だって起こるかもしれない…。僕は、あの2人を信じてみようと思います」
誠は、さっきのシュウの言葉を思い出していた。
斉藤先生の言葉が、廊下の先まで響く。
「今晩が…山だと思います」