コスモス


……………

僕が病室に入ってから、随分時間は過ぎていた。
規則正しく、人工的な音が響く。

目の前の明日可の瞼は、しっかりとくっついたまま動く気配を見せない。

それはもう二度と開かないのではないかという恐怖が胸を過り、僕は思わず唇をかんだ。


…今、何時くらいなんだろう。
ぼんやりと、目が時計を探す。

…ふいに、何かを感じた。

急いで目を明日可に戻す。


「明日可…?」


明日可の手を取り、声をかける。
看護師さんが、僕の声に気付き近寄って来た。


…うっすらと、明日可の瞼が開く。


「先生っ!」

看護師さんが、急いで先生を呼びに行く。
明日可の目が、僕の方へ動く。


ゆっくりと、でも確実に…

僕等の目は、あった。


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