コスモス
第三章【始まりの自転車】
……………
朝は苦手だ。
低血圧な人間は誰でもそうだろう。
まして、徹夜明けの低血圧人間にとって、朝日は凶器以外の何者でもない。
結局僕は、一睡もできずに朝を迎えた。
昨日の出来事…憧れの彼女との偶然の会話と、彼女の『彼氏』の存在。
喜ぶべきか、悲しむべきか、正直わからなかった。
話せたこと、覚えてくれてたことは、死ぬほど嬉しかった。でも。
「年上好きなのか?」
窓の外の憎き朝日をぼんやり眺めながら、ぽつりと呟く独り言。
彼の傘の中に何のためらいもなく飛び込む彼女の後ろ姿が、瞼の裏にしっかりと焼き付いて離れない。
のそのそと学校へ行く準備をしながら、何をどう頑張っても彼女の年上だけにはなれないの、なんて、どこかの少女漫画のヒロインの台詞みたいな言葉を脳裏に過らせた。
そんな女々しい自分に、嘲笑。
「…行ってきます」
…ため息とともに、家を出た。