コスモス
げた箱の柱に寄りかかっている華奢な体。
こっちを見つめる黒い大きな瞳。
サラサラの長い茶色い髪。
僕が間違えるわけがない。
「瀬堂さん…」
呆然と佇む4人。
彼女の瞳が僕を呑み込んでしまいそうで、瞬間的に視線をそらした。
「あ…あー、本物じゃん、ね、本物!」
意味の分からないフォローをするタケ。
最悪だ。
穴があったら入りたいというのは、正にこのことだ。
『瀬堂明日可派』を聞かれてしまった…。
「ふっ…」
小さな笑い声で、僕は思わず顔を上げる。
昨日と同じ様に手を口元にあてて、彼女の瞳が笑っていた。
そんな彼女に合わせて、調子のいいタケと誠二も笑う。
「あはは、うん、ね。じゃ、俺らは行くわ。おい、行こーぜ。じゃね、修ちゃん、と、瀬堂さん」
誠二がタケとカズを引っ張って行った。
すれ違い際に、カズの手が僕の肩を叩く。
『頑張れ』ってことかよ…。
「ばいばい」
彼女もまた、笑いながらカズ達を見送った。