コスモス


…「面白いね、須川君のお友達」

カズ達が見えなくなって、ようやく彼女が口を開いた。

まだ少し笑っていた。

「あ~…、バカばっかで…」

クシャっと髪をかきながら答える。

黒目がちの瞳がこっちを向いていることはわかっていたが、僕は見つめ返すことができずに下を向いていた。

その視界に、彼女の白い手が現れる。

思わず顔を上げると、彼女は僕の方に手を伸ばしていた。


「傘。昨日貸したでしょ」


…あ。

しまった。


「あ…か、傘…、あ、ごめん、すっかり忘れて…」

話せた事と、彼氏のことが気になって、借りた傘をすっかり忘れてしまっていた。
どこまでも空回りだ。

「あ、明日!明日必ず持ってきますっ!」

焦りながらも、僕はとりあえず謝った。


「しょうがないなぁ」

ふぅ、とため息をつく彼女。
ドキッと心臓が跳ねる。


ヤバ、呆れられた?


「須川君って、チャリ通学?」

「え?」











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