コスモス
第十一章【大切な人】
……………
浮き足立つ行き交う人々。
店々から流れる定番のクリスマスソング。
ライトアップされた街を、大きな荷物を提げて歩くカップルや家族連れ。
…12月24日。
街はクリスマス一色だ。
そんな人々の中に、1人浮かない顔で歩く僕。
あの日から、ずっと頭について離れないこと。
…あの、修学旅行最後の日から。
ポッケに手を突っ込んで、軽く頭をふる。
時計を見ると、針は7時を指していた。
今日だけは。
今日だけは全て忘れる。
今日だけは…明日可のことだけ考える。
何日も前からそう決めていたが、ライトアップされた街があの日の景色を連想させる。
僕は、全てを振り切る様にヘッドホンをかぶった。
あえて明るくうるさい曲を聞く。
…考えない。
今日は、今日だけは、僕の中には明日可だけ。
明日可のことだけ考えるんだ。
逃げるのは、僕の得意分野じゃないか。
街を歩きながら、僕は自分に何度もそう言い聞かせていた。
…明日可の家に行くまで、あと一時間。