コスモス
第十二章【僕等の約束】
……………
三学期は短い。
よって、春休みも短い。
「俺…春休み何してたんだろう…」
ざわついた教室の中で、ポツリと呟く。
「補習受けてたんじゃないの?」
ガタンと椅子を鳴らし、カズが目の前に座った。
髪を切り、ますます爽やかさに磨きをかけたカズをチラリと睨み、はぁとため息をつく。
「俺の貴重な春休み…くそ、ヒロミのやろー…」
「日頃から勉強しとかないから」
昨日発売されたジャンプをパラパラとめくりながら、カズはサラリと言った。
…くそ。頭のいい奴はこれだから。
端正なカズの横顔を一瞬睨んだが、カズの目が一向にジャンプから離れないので、僕はまたため息をつき窓に視線をずらす。
…桜の花びらが、ヒラリと舞うのが見えた。
その行方を目で追うが、すぐに他の花びらに邪魔されて見失う。
去年よりも桜の位置は高く見えていた。
いや、実際高い位置に僕がいるのだ。
見慣れないクラスメート。
去年とは違う外の景色。
気付けば僕たちは、最高学年になっていた。