コスモス

とりあえず、何か話さなきゃ。
彼女の真っ直ぐな瞳に見つめられたら、いつも以上にどうしていいかわからなくなる。

「あ、か、傘、傘!明日、絶対持ってくるから」

結局出たのはこの話題。しかも明日持ってきてしまったら…


もう、接点がなくなってしまう。


「いいよ、持ってこなくて」
「へ?」

予想外な彼女の返答に、僕はめちゃくちゃ間抜けな返事をしてしまった。

「天気予報じゃ、しばらく晴れだし、晴れの中傘持って帰るの恥ずかしいもん」

間抜け面の僕にあっさりと言う彼女。

返さないってことはつまり…まだ接点がもてるってこと。


よっしゃ。


「その代わり」

ドキッとした。僕のよこしまな考えが見透かされたかと思った。
びくびくしながら繰り返す。

「そ…その代わり?」
「明日もまた乗せて、自転車。」

…明日も?


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