コスモス
「あ、ありがとうございます。持ちます」
僕はお祖母さんからお盆を受け取る。
「あら、ありがとうねぇ」
ニコッと笑う彼女に秋桜が声をかけた。
「ねぇおばあちゃん、あの小川まだある?」
子どもの様なキラキラした瞳。
「ああ、あるよ。秋ちゃんが来ちょった頃となぁんも変わっちょりゃせんいね」
曲がった腰をくいっと伸ばしながら優しい声で答えた。
「よかった!ね、修平、麦茶飲んだら付き合って!」
状況を飲み込めないまま、僕は「あぁ」と頷いた。
…乾いた喉に、田舎の味がする麦茶は最高に美味しかった。
…「わぁ…ほんとに何にも変わってないや…」
麦茶を飲んだ後、僕は秋桜についてここまで来た。
家の裏の小道を抜けるとこの場所に着く。
「ね、綺麗でしょ?」
くるりと振り向いて秋桜は言った。
「あぁ…なんか映画に出てきそうな雰囲気」
「何それ、田舎映画?」
ははっと機嫌よく笑う秋桜。
僕はもう一度目の前の景色を見た。
…青々とした木々を写す小さな小川。
切り取ったら絵葉書にでもなりそうなくらい綺麗だった。