コスモス

「昔よくここで遊んだんだ。おばあちゃん家来ると決まってすぐここに向かって。弟と2人で日が暮れるまで遊んだな…」

懐かしそうに瞳を細める秋桜。
僕が口を開く前に、彼女はミュールを脱ぎ捨てた。

「あ…」

僕が名前を呼ぶのも待たず小川へと駆け込んで行く。

「ほら、修平もっ!今日は童心に帰ったつもりで遊ぼうよ!」

水しぶきをあげながら、秋桜は僕に向かって叫んだ。

ワンピースの裾を掴んで子どものようにはしゃぐ秋桜。
周りの水しぶきが水色の金平糖の様に見える。


…秋桜のこんな笑顔を見たのは、初めてだった。



「…よぉし、行くか!」

ニヤッと笑った僕は、スニーカーを脱ぎ捨てて小川へと駆け込んだ。

夏の小川の水は肌に心地よく、木々の揺れが夏のにおいを加速させる。



…僕たちは子どもの様に、日が落ちるまではしゃぎ回った。






















…「あーっ、遊んだね~」
「あぁ、なんかこう…遊んだって感じだな」

すっかり日が落ちた縁側で、お祖母さんの出してくれたスイカをかじる。

甘い汁が口いっぱいに広がった。




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