コスモス

明日可を好きになり、明日可に恋をし、幸せも苦しみも味わった。
それは全て今の僕に繋がっている。

もしそれを経験せずに適当な幸せを掴んでいたとしても、
僕はそれを『幸せ』とは呼びたくない。

明日可がくれたもの全てが、僕の『幸せ』だ。
だから。


「…秋桜のお母さんは、秋桜を恨んだりしてないよ」


僕は秋桜の頭を撫でた。


「…っていうか、許すとか許さないとか、そういう対象じゃないだろ?俺もよくわかんないけど…愛ってさ、そういうもんじゃないじゃん。お母さんは…秋桜を、愛してたよ。愛してる人を…許すとか許さないとか、そんな枠には当てはめないよ。ただ…」

秋桜の肩が震える。
僕は優しく肩を抱いた。


「…ただ、幸せになってもらいたいだけだよ。秋桜のお母さんも、きっと…」


愛だとか幸せだとか、僕には全てわかっているわけではなかった。
でも1つだけわかる。

秋桜のお母さんは、きっと秋桜を愛していた。

今日の小川での秋桜の顔。


あの顔は、誰かの愛を一心に受けてきた顔だった。



…それはきっと、母親の愛だ。


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