コスモス
秋桜の嗚咽が夏の夜に響く。
それに混じって、風鈴が揺れた。
「…本当に?お母さん…あたしのこと…あ、愛して…」
「うん」
「あんな…あんな、あたしのせいで、あたしの…」
「秋桜のせいじゃないよ。だって、秋桜も…お母さんのこと、愛してただろ?」
秋桜の肩が震える。
「…うん…」
「愛してくれる子どもを、愛さない親なんていないよ。秋桜のお母さんは…そんな人じゃなかっただろ?」
「…うん…っ」
「大丈夫。大丈夫だから…。秋桜はちゃんと、愛されてたよ…」
…声を押し殺す様に、秋桜は泣いた。
多分、お祖母さんに気付かれない様に。
泣きながら、かすかに「ありがとう」と呟く。
僕はそれに答える様に、頭を撫でた。
秋桜に語りかけながら、僕は自分自身にも語りかけていた。
…明日可。
幸せだとか苦しみだとか、好きだとか嫌いだとか、僕にとって明日可はそんな存在じゃなかった。
明日可は僕の全てだった。
どうあがいても、どう背いても、僕の運命はもう決まっている。
僕の全ては、明日可だ。
昔も、今も。