コスモス


「…ああ」

どんな形であれ、僕たちはお互いを必要としていた。
僕たちなりの、小さな恋だったのかもしれない。


「ありがとう、秋桜」


僕の言葉に笑顔を返す秋桜。


「…じゃあ…、あたしは、お母さんの命日まではこっちにいるから。ちゃんと、向き合ってくる」
「うん…。そうだな」






…切符を買ったところで、近くの踏切が鳴り出した。
時間だった。

「…じゃあ、お祖母さんによろしく」
「うん。…ありがとね」

改札をくぐろうとした時、ふと思い出して言った。


「秋桜…花言葉、詳しいの?」


きょとんとした秋桜の顔がそこにはあった。


「や…コスモスは、自分の名前だから知ってただけ。何?」
「いや、ちょっと思い出して…」




『知ってる?』






「スズランの花言葉、知ってるかなって…」




…修学旅行のお土産であげたスズランとくまのキーホルダー。

何故だか今、そのことを思い出したのだ。


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