コスモス
第十六章【コスモス】
……………
カランというベルの音が鳴る度に、僕は雑誌から目を入り口へと向けていた。
入って来たのは仕事途中のサラリーマン。
軽くため息をつき雑誌に目を戻す。
…外は秋晴れ。
暑さも少し和らいだ様に思えるが、まだまだ汗がにじみ出る9月半ば。
僕は懐かしい喫茶店に腰をおろしていた。
懐かしい人と会うために。
…さっきのサラリーマンが入ってきてから数分後、再びベルが鳴った。
秋の日差しが店へ差し込む。
小柄な体にシフォンのスカート。
長い髪がサラリとなびく。
一瞬目を店内に泳がせたが、僕を見つけて彼女は懐かしい笑顔を見せた。
僕もそれにならい、顔をほころばせる。
軽く手を上げて、声をかけた。
「ミキ」
ミキも軽く手をふり、僕のほうへと駆け寄ってきた。
走り方は、昔と何一つ変わっていない。
僕の前の席に腰をおろし、ミキは言った。
「久しぶり!」
僕も雑誌をたたみ、笑顔で言う。
「久しぶり」