コスモス
…飛行機の時間が近づき、僕は席を立った。
「じゃあ…今日はありがとな、わざわざ来てもらって」
伝票を受け取り言う。
「ううん、どうせ夏休みだしね」
ミキも席を立って言った。
「…じゃ、行くわ」
名残惜しさを振り切り、僕は出口へと向かった。
お金を払いミキを振り返る。
席を立ったままミキは軽く手を振った。
僕もそれに応える。
カランとベルを鳴らし、僕は秋空の下へと出ていった。
…修平が出ていった後、ミキはもう一度席についた。
気を利かせてくれたマスターが、カフェオレのおかわりを運んでくれる。
「ありがとう」
笑顔でお礼を言い、そのカップを見つめて呟く。
「…明日可。須川君、何一つ変わってないよ。…あの頃のままだよ」
…キュッとカップを握る。
「…誰も、明日可を思い出になんてできてないよ…」
…ミキの声は、黙ってカップを拭き続けるマスターにだけ届いた。