メイド遊戯
「あのクソ親ーっ!絶対殴ってやるーっ!」

「ああ、無理無理。いつ帰ってくるかわかんねーから」


行き場のない怒りを、柔らかなソファーを殴ることで納める。

親をぶん殴りたいと思ったのは初めてだった。


「毛利さん。ちなみに、あの人たちはいくら借りたんでしょうか?」

「巽で良いぜ。……ざっと5億かな」

「ご……っ!?」

「新しい会社を立ち上げるから貸してくれって言ったらしいぞ。結局失敗したらしいが」


呆れて殴る気もなくなってしまった。

我が親ながらなんとも情けない。

自然と涙が出てきた。


「あのクソ親ぁ……どこまで娘に迷惑かけるつもりなんだよぉ……」

「よしよし。泣くな泣くな」


巽さんがぽんぽんと私の頭を撫でた。

その手つきに安心して、思わず目を閉じる。

が、その幸せはすぐに崩れ去った。
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