不安定帰路【短編】
不安定帰路
「さむっ」
帰り道、吹き付ける冷たい風に身を震わせた。
「じゃあ俺が暖めてあげようか?」
「いい。
冗談は顔だけにして」
その言葉に隣で寂しげに笑う彼に少しの罪悪感。
付き合ってないし、好きって言われたわけでもない。
けど2人でいつも一緒に帰ってる。
核は言わないけど核心に迫る発言をしてくる。
その頻度と内容、態度からなんとなく思ってることがある。
多分……私のこと好きなんだってこと。
日に日に縮まる距離に少し嫌悪感を抱く。
……私、どうしたいんだろう。
溜め息がでる。
好きではない。
でもドキドキするし、一緒にいたいと思う。
このままでいい。
このままの関係がいい。
だから絶対言わせないようにしてる。
告白しやすい空気は作らないように心がけてるし、これ以上踏み込まれないよう一本線も引いている。