幽霊執事でございます
そして。
「おかーさーん!!!!」
半泣きであたしは叫んだ。
「黒い人!黒い人いる!!」
「だだだだから嫌だったのよー!!」
母もあたしの言葉に絶叫して拒否する。
すがすがしく騒いでくれて、逆にあたしが冷静になった。
考えてみると。
『幽霊執事でございます』
なんてあの人は言っていた。
つまり……執事の幽霊?
つまり、あたしたちに見えてお母さんには見えないもの。
……つまりつまり?
「あの……執事さんとやら、母に何かしました、か……?」
「あぁ、奥様が重い荷物を抱えていたので荷台を……」
「お願いですから母には何もしないでください!!本当にそういうのムリな人なんです!!」
母に霊感はない。
母が体験したのはポルターガイスト現象ということだ。
物が勝手に動いたように見え――、叫んだらしい。
そしてどこかに行っていたらしい父が戻ってきた。
「あ、葉山(はやま)。久しぶり」
そう黒服の人を呼ぶ父は、この人を知っているらしい。
「お久しぶりでございます、旦那様」
「そうか、もう旦那様って呼ばれる立場なのか……はは」