桜雨
放課後、彼らは学校の屋上で会うことになった。


結局、彼からはあまり具体的な説明をしてはもらえなかった。


なぜ、あんなにも大好きだったサッカーをやめてしまうのか、


「都会の大学に行きたいから」という理由だけだとは到底思えなかった。


確かに、「サッカー選手として大成できるか保証なんてないし」


という彼の理由は、ある程度説得力はある。


だけど。


ずっと、17年間傍で、サッカーに夢中になる彼の姿を見てきて、


将来の不確かさ、という理由で止めてしまうとは思えなかった。


「ばか!大馬鹿!簡単に夢を諦めちゃうなんて、だいっきらい!」


なぜ、ここまで自分が腹を立てているのか、彼女は自分でもよくわからなかった。


だけど、彼がここでサッカー選手をあきらめることは、


彼女にとって、ひどくくやしかった。


涙が、ぽろぽろと零れおちた。


それを見せたくなくて、


彼女は彼に向ってそう叫ぶと、そのまま背を向けて、屋上から走り去って行った。


「・・・」


彼は何も言わず、その場で彼女の後姿を見守るだけだった。


夕方に時刻がさしかかろうとしている時だった。


オレンジ色の太陽だけが、2人を見ていた。










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