桜雨
これを機に、2人はあまり会話を交わすことが無くなった。
朝も、一緒に登校しなくなり、
帰りはもちろん、顔を合わせることもほとんどなかった。
1度、両親と外食に行くために、街へ出る途中、
彼が歩いているのを見かけた。
隣には、可愛い、同級生ぐらいの女の子がいた。
見知らぬ女の子だった。
「・・・」
これが、理由なのだろうか。
サッカーをやめた、本当の理由。
大好きな女の子が出来て、そのこと付き合いたくて、止めたのだろうか。
「・・・馬鹿」
彼女は、乗っていた車の窓ガラスに向かって、そう、小さく呟いた。
はぁ、と窓が白くなり、彼の姿が曇った。
そっとその上に指を置いたが、・・・曇りを消すことは無かった。
高校2年生の、若葉が揺れるこの季節。
自分の想いに気がつくきっかけがあったはずの、緑色の季節だった。