桜雨
出逢い

桜の木の下で―山内邸宅にて―



あまりに突然の閃光と強風で、彼女は気を失っていた。


しかし、それはあくまで一時的なもので、


すぐに彼女はそのまぶたをゆっくりと開ける。


ぴく、と動く手は、何かを探すかのように辺りを探り出した。


あれ?と彼女は脳内で、手に覚えた感触に疑問を抱く。


ここは、校庭のはずで、


私が立っていたのは、確か土のままで舗装されていない部分だ。


それなのに、・・・何故柔らかい感触があるのだろう。


ぼやけている景色が、次第にその輪郭をはっきりさせていく。


彼女はおそるおそる顔を上げた。


すると。


「お嬢様!幸枝お嬢様!!」


どこからともなく、そんな声が聞こえてきた。


「しっかりしてください、幸枝お嬢様!


どういたしましたか、ご気分が悪くいらっしゃいますか?」


若い声だった。


だけどどこかしっかりしていて、頼りがいのある声だ。


「・・・あ・・・」


「お嬢様、意識ははっきりしていらっしゃるのですね」


彼女は、背中を起こしてくれた人の顔を確認する。


「・・・あ、・・・あなたは・・・」


どこかで見た顔だ。


だけど、・・・どこだっけ。


・・・あれ?


この人、着物を着ている。


珍しい、こんな若い子が着物を着るなんて、・・・何かあるのかな。


ぐるぐるとそんなことを考えているうちに、


ぞろぞろと何人もの足音がこちらに近づいてきた。


「幸枝さまがまたお倒れになられたのですか!?」


「お嬢様をお部屋までお運びいたしましょう」


「意識の方ははっきりされているのでしょうか」


なんやかんやで騒がしい。


彼女は次第に意識もはっきりしてきたため、自分で体を起こそうとした。


・・・が。


(腕に力が入らない!?)
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