桜雨
男たちが向かったのは、庭の真ん中に位置する、
これまた大きくて豪勢な屋敷だった。
(ここ、・・・どこなんだろう)
上向きに見る屋敷の天井には、至る所にまばゆいシャンデリアがつるされ、
視界の端には、明らかに高価そうな壺や像が映る。
唯一分かるのは、ここが、豪邸である、ということ。
恐らく、自分には想像もつかないほど、裕福な人が住んでいる違いない。
それ以外は、正直分からない。
自分が置かれている状況すらも良く分からない。
どう理解して良いものか、ぐるぐる考えを巡らせても、
分からないものは分からない。
ただ、どうやら自分の体が以前より随分弱っているのも分かった。
「お嬢様、到着いたしました」
長い長い廊下をたどっているうちに、目的地に着いたらしい。
そう言われて、はっとしていると、彼女はとても柔らかい場所へと身を置かれた。
「ベッドでございます。お休みなさいませ」
「え?」
広い部屋の真ん中にある、大きなベッドの上に、彼女は横たわっていた。
やはり天井には素晴らしいシャンデリアがある。
そして、窓からは。
「・・・桜」
先ほどの桜の木だろうか。
それが良く見えた。
「・・・ふぁ」
何故か、強い眠気が彼女を襲ってくる。
抗うのも難しいほどに、薬を飲んだのではないかと思うほど、強い眠気だ。
「・・・少し、寝かせてもらおう」
そう言い終わらないうちに、彼女はベッドの枕の中に顔を埋めていた。